連載「船のドライブ トラブルシューティング」の1回目です。
「ドライブの調子がおかしい」「この部品を探してほしい」。
そういうご相談をいただいたとき、私が最初にお聞きするのは「どのドライブが付いていますか」です。
ここが分からないと、症状を伺っても、部品を探しても、話が先に進みません。
この連載では、私が実際に関わった艇で起きたことを1回に1つずつ取り上げます。
そのうえで、オーナーの方が自分で確かめられることと、専門の業者に任せたほうがいいことを分けて書いていきます。
1回目は、その手前の話です。うちの船は、どのドライブか。
【まず、3つのうちのどれか】
船を進める仕組みは、大きく分けて3つあります。陸に上げたときに、船尾と船底を見れば分かります。
| 方式 | エンジンの場所 | 陸に上げたときの見分け方 |
|---|---|---|
| 船内外機(ドライブ艇・スターンドライブ) | 船内の船尾 | 船尾の板(トランサム)の外に、プロペラの付いた「脚」が出ている。脚と船体のあいだにゴムの蛇腹(ベローズ)が見える。船底からシャフトは出ておらず、舵も別には付いていない。エンジンが船内にあって、操船席にTILT・TRIMのスイッチがあれば、それも手がかりになる(同じスイッチは船外機にもある) |
| 船内機(シャフト船) | 船内 | 船底からシャフトが斜めに出ていて、その先にプロペラ、後ろに舵板が付いている |
| 船外機 | 船尾の外 | エンジンごと船尾の外に掛かっている。船内にエンジンは無い |
この連載で扱うのは、1つ目の船内外機です。舵とプロペラを兼ねた船尾の脚を、ここでは「ドライブ」と呼びます。
ひとつ、言葉で迷いやすいところがあります。「ベローズ」です。
ドライブ艇では、ドライブと船体のあいだにあるゴムの蛇腹をベローズと呼びます。
一方で、シャフト船にも、シャフトが船体を抜けるところの水止めにゴムのベローズを使った形式があり、同じ言葉で出てきます。
この2つは別の部品です。部品のご相談のときは「ドライブのベローズ」「シャフトのシール」と、どちらの話かを添えていただくと間違いがありません。
【以前ご相談をいただいた艇で ── 1枚のカードで、ドライブ艇だと確定した】
以前、海外メーカーの艇のご相談で、オーナーの方から1枚のカードの写しをいただきました。
造船所が発行した、その艇の仕様を書いたカード(IDカード)です。
そこには、エンジンとドライブの型式、それぞれの製造番号まで載っていました。
ドライブの欄には「Sterndrive」の文字があり、この艇がドライブ艇であることが、書類の上で確定しました。
エンジンが船内にあると、つい「船内機」と呼びたくなります。
でも、ドライブ艇とシャフト船とでは、見るところも、要る部品も違います。
当社では、推進の方式は書類か現物で確かめてから書くことにしています。
ただ、そのカードには、初年度登録も船舶検査の期限も載っていませんでした。
1枚の書類で分かることと、分からないことがあります。
何が載っていて、何が載っていないかまで見ておくと、あとで取り違えません。
【別の艇で ── 銘板の最後の1文字が読めなかった】
別の艇では、ドライブの上のほうに付いている銘板(メーカー名と型式が刻まれた金属の板)を写真に撮って読みました。
ところが、塗装の剥げが文字にかかっていて、メーカー名は読めるのに、型式の最後の1文字が読み切れませんでした。
その場では型式を確定させず、のちに確かめてから確定しました。
1文字違えば、別の型式です。
部品は型式で変わりますので、読めたつもりで進めると、合わない部品を取り寄せることになります。
【ここから言えること】
- 外から見れば、ドライブ艇かどうかは分かります。どのドライブかを確かめるなら、いちばん確かなのは銘板か書類です
- 読めない文字は、読めないままにしておきます。似た型式で埋めないことです
- 書類は「何が載っていないか」まで見ておきます
【オーナーの方が自分で確かめられること】
- 船尾を見る。陸に上げたときに、ドライブとベローズがあるか、シャフトと舵があるかを見ます
- 操船席のスイッチを見る。エンジンが船内にあって、TILT・TRIMのスイッチがあれば、ドライブ艇の手がかりになります(同じスイッチは船外機にも付いています)
- プロペラの数を見る。ドライブには、前後に2枚のプロペラが重なって付く形式もあります(たとえばボルボ・ペンタのデュオプロップ、マーキュリーのブラボースリー)。1枚か2枚かは、外から分かる手がかりのひとつです
- 銘板を撮る。ドライブの上部や、船体側の取付部に付いていることがあります。どこに付いているか分かる引きの1枚と、文字が読める寄りの1枚を撮ってください
- 書類を見る。エンジンの型式は船舶検査証書で確かめられます。海外メーカーの艇では、造船所のIDカードにドライブの型式まで載っていることがあります。取扱説明書が残っていれば、それも手がかりです
ドライブを作っているメーカーには、たとえばボルボ・ペンタ(アクアマチック)、マーキュリー(マークルーザー)、ヤンマーなどがあります。
メーカーが分かるだけでも、探す範囲はかなり絞れます。
銘板を撮るときのコツ
- 角度を変えて何枚か撮る。光の当たり方で、読める文字が変わることがあります
- 汚れや塗装で読めない文字は、無理に読まず「ここは読めない」と書き添える
【安全のために】
ドライブのまわりは、見るだけでも危ないところがあります。
- 陸に上げた船の下に入るときは、船台やトレーラーが安定しているか、輪止めがしてあるかを先に確かめてください
- ドライブのまわりを見るときは、エンジンを止めてキーを抜いておきます。ほかの人がエンジンを掛けたり、チルトを動かしたりしないよう、声を掛けておいてください
- チルトでドライブを上げ下げするときは、ドライブの下や、ドライブと船体のあいだに手や体を入れないでください。挟まれます
- エンジンが掛かっているあいだは、ドライブとプロペラに近づかないでください
- 銘板は、水に浮かべたまま船尾から身を乗り出して見るのではなく、陸に上げたときに確かめるのが安全です
【専門の業者に任せること】
今回は「見分ける」までですので、作業はありません。
ただ、銘板が無い、読めない、書類も無い、という場合の型式の特定は、部品の形や本体の刻印から絞り込むことになり、専門の知識が要ります。
その場合は、次の写真をお送りください。
- ドライブ全体を横から撮ったもの
- プロペラ全体
- 本体に刻まれた文字や数字(鋳物の表面の刻印)
当社は修理工場ではありません。型式を特定して部品をお調べし、専門の業者におつなぎする窓口です。
型式が分かったら、銘板の写真と、気になっている症状を添えて、お問い合わせからご相談ください。私がお返事します。
【次回】
連載の2回目は「回転は上がるのに、速度が出ない」です。
以前ご相談をいただいた艇で、私はドライブとエンジンのターボの両方を疑い、原因はターボの側にありました。
その話から、ドライブとエンジンの切り分けを書きます。
【中古艇をお探しの方へ】
当社が取り扱っている艇は、こちらでご覧いただけます。
中古艇ドットコム/株式会社たけこし企画 海事部の掲載艇一覧
https://www.chukotei.com/member/detail/125.php
【動画でもご覧いただけます】
釣りタケちゃんねる(中古艇ドットコム 北海道エリアチャンネル)
https://www.youtube.com/channel/UCj7H_cRY_Z2vtGIi9rzITsQ
現地での取材、実際の作業、艇のご紹介を動画にしております。
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